ちょままちょままま

何でも書きます

SSPPに参加して思うひなビタ♪の在り方

先日、といいますか2018年末に

 

EDP presents ひなビタ♪ ライブ2018~Sweet Smile Pajamas Party~

 

こちらに参加してきました。これがバカに良いライブだったのです。

ほんとはすぐに書きたかったのですが、そこで頂戴したオタクウイルスと卒論提出でしばらく空いてしまい、ようやく時間もできたので怪文書を作成しました。

 

まぁですね、このライブがバカに良かった(2回目)(この表現は先日プロ棋士菅井竜也前王位が反則負けした1手を評して「バカに良い手」と仰られたところを原典としています)んですが、会場が豊洲PITでキャパが3000くらいですか。

それが埋まらないんですよ、バカに良いライブだったのに(3回目)。

なんだ、ひなビタ♪って存外若いコンテンツなのかと思うかもしれませんが、なんと開始から丸6年が経過した長寿コンテンツなのです。

6年続けるようなコンテンツがキャパ3000を埋められない。そこに思うところがあったので今回の怪文書のテーマはその辺になります。

 

さて、私なりの結論から言うと「ひなビタ♪というコンテンツそれ自体が時代に逆行的」だということです。

オタクのマジョリティが求める方向に向いていないからこのような事態になっているのだと、そう言いたいのです。

決して私はそれが悪いこととは思ってはいません。現に私はひなビタ♪がとってもとっても大好きなので。純粋に客観的な意見として捉えてもらえればそれがうれしいです。

 

ではそのマジョリティオタクってなんなのでしょう。

昔のこと、それこそ我々が生まれる前とかのことを思えばオタクの門戸は広がり、その在り方も多様化してきました。陰キャキモオタクの対岸にいるような華やか芸能人がオタクを自称するのを目にする機会も増えました。

このようなオタク領域の拡大によってコンテンツ消費の在り方も多様化しています。

元々いたオタクって、コンテンツに対するあらゆる情報を網羅し、人よりも少しでも多くの知識があることがステータスだった印象がありますが、そういうオタクは今や奇人扱いされても文句が言えないほどに駆逐されてしまったように思います。

批評家だったり思想家だったりする東浩紀は「データベース消費」という言葉を使ってこれを説明しています。

雑に言うと00年代以降のオタクはコンテンツを全体としてではなく、自分の気に入った要素(=データベース)でのみ楽しむようになったということだと思ってます。

それは例えば特定のキャラにのめりこむであったり、同人作品ばかりを推すであったりするんですが、ここでは比較としてひなビタ♪と同じくガールズバンドを題材にした現覇権コンテンツこと「BanG Dream!」(バンドリ)を見てみましょう。

バンドリの楽しみ方ってすごくたくさんあると思うんです。音ゲーをやるも良し、ゲーム内ストーリーで悶えるも良し、アニメを観るも良し。好きな声優を追うこともできるしラジオやリアルイベント、演奏にコミカライズなんでも来いといった感じです。

最近流行しているコンテンツを思い出してみると結構こんなのが多いような気がしませんか。というのもメディアミックス大好き芸人の某KAWAさんが大抵の場合噛んできてるからとかいうのはまぁ置いといて。

つまりこうしたオタクのオタク性の変容に対して、そこに何でも用意できるような、ほしゆめみたいなコンテンツがオタクの心を掴んでいるというわけです。

 

対するひなビタ♪はどうでしょうか。私個人の見解ですが、コンテンツの1要素だけを切り取るより、包括的に触れていった方が圧倒的に楽しいように、ある種旧来的なオタクの楽しみ方をした方が良いように出来てしまっています。

少し脱線しますが先日ひなビタァ()数名とここなつ(ひなビタ♪の派生ユニット)のライブ映像を鑑賞していた時の話です。ライブも終盤、そこで「ツーマンライブ」という少しでもひなビタ♪のストーリーをかじった者なら多動にならざるを得ない楽曲が披露され、当然我々は多動してたのですがその横にいた真姫推しのラブライバーみく推しのPクリス(以下略は1人スマブラに興じているのです。

そのぐらいの温度差が平気で生まれてしまうコンテンツなのです。

じゃあみんな全部を追っかければいいのでは?となりますが、ここの壁が厚いのなんのって。同作はアニメ化などされておりません。主な展開はFacebookや、公式サイト上で行われています。キャラたちの会話を模した投稿で楽曲の背景が語られ、時期を見て動画配信で楽曲が発表されるというのが基本的な流れですね。

これが大変!開始2012年のコンテンツですから丸6年が経過した膨大な量の文章を掘り進めなければなりません。展開媒体が媒体なもんで基本的に文字しかありません。英国ファンタジー研究者の脇明子が指摘するように現代の若者は視覚的な刺激で物語を消費することに慣れすぎています。つまり活字離れ甚だしいということです。ターゲットにしたいはずのその層が文字を読めない(失礼)のだからハードルの高さは推して知るべきです。ほんとに朝読書とかいう文化はなにをしているのか。あと基本的に与えられるキャラのイメージは静止画です、動いてくれません。厳しい。

こんな風に、好きなように好きなコンテンツを消費してきたオタクには、ちょっとひなビタ♪良いから追ってみてと言われたくらいでどうにかできる代物ではないのです。

きっとほとんどは音ゲーから入ってじわじわハマっていったオタクでしょうし、全くのゼロから推したとなると一体どの程度いるのやら。

全然関係ありませんが、私は14歳の誕生日に「お前もシンジ君と同い年だからこれを観ておきなさい」と叔父からエヴァのアニメと旧劇の円盤をプレゼントされ、感想を強要されたのですがそれくらいの厄介さかなとも思います。ついでにこの時に目押しも教わりました。

 

 

ではひなビタ♪はどうすればよいのか。

6年もやって今更大衆に迎合しろというのはきっと作り手も望まないでしょう。そもそもこういったコンテンツの在り方にしたのはひなビタ♪おじさんです。おそらくわざとやっています。物語の舞台が寂れた地方都市であることもひょっとすると数を減らす旧来的なオタクのメタファーなんじゃないかとさえ私は勘ぐっています。

 

そんな中都合の良いことに同じ制作陣で「バンめし」というコンテンツが始動しました。こちらもひなビタ♪と根幹は共通するような展開の仕方をしていますが、少しずつ変化も見られます。媒体がアメブロになったり、最近手に入れたLive2Dの技術を活かして動く演奏シーンなどなど。ちょっとだけとっつきやすくなっています。しかも今ならすべて追ってもそんなに時間がかからない!あとはどこかのアニメ屋が目を付けて映像化でもしてくれれば、、、といった感じですか。とにかくこちらも今後の展開に期待するしかありません。

 

最後に、さんざんハードルが高いと書きなぐりましたが、それでも私はひなビタ♪に触れてみてほしいなと思っています。私自身、ひなビタ♪を知ったのは友人のアニソンDJがたっまたま楽曲を使用していたからでそこからです。そんなきっかけでも先日のライブに参加してあぁこのコンテンツに出会えてよかったと心から思えました。きっと後悔はしないのでまずは楽曲からでも、どうかひなビタ♪を日向美ビタースイーツをよろしくお願いします。

 

おまけ

 

SSPPをみて思ったひなビタ♪の良いところ

 

・ライブの構成が良い

こんなものだいたい自分の推しコンテンツのライブ行けばそう思うのでは?となりますが、決してこれは好きな曲をたくさんやったからとかそういう意味では言ってません。

そうではなくてやらない曲が素晴らしいなと思いました。

例えばまり花には「ミラクル・スイート・スイーツ・マジック!!」という曲がありますが、この曲は今回披露されていません。というのも同曲は作中、めうプロデュースにより作成されたという背景があり、めうが参加していない、同級生トリオ(トリオって表現も昭和的ですよね)だけのSSPPには不相応であるからです。

5人そろったときにやった方が我々に与える感動は大きいと考えてのことでしょう。

他にも今回ゲストでここなつの2人が参加してくれましたが、彼女らの扱いにも良さがありました。SSPPでここなつは計3曲に参加します。この数が絶妙だと感じました。あくまでゲストはゲスト、長居はさせませんでした。それでいてここなつのファンもがっかりしないよう新曲と初披露の既存人気曲を入れてくる。特にコメントを述べるわけでもなくさっさと掃ける。私はここなつのファンですがちっとも不満はありませんでした。

 

演者がキャラクターを降ろしている

これはすごいなと思いました。演者がイタコのようにキャラを憑依させて彼女らが言いそうなこと、やりそうな仕草をいともたやすくこなしているのです。よくあるキャラの決め台詞的なものを何度も何度も使うあれではなく、即興で言いそうなことを言いそうな表現でやるんです。ひなビタ♪という作品はアニメ作品ではありません。声優さんがコンテンツに関わるのはSSPPのようなライブや生放送、動画配信に曲の収録、たまのドラマCD程度でしょうか。アニメにおけるレコーディングの部分がないのです。これは極論ストーリーを知らなくとも仕事をこなせてしまうということです。それなのに彼女らは日向美ビタースイーツを顕現させているのです。つまりあの膨大な量のFacebookをきちんと読んでいるんです。すごい。

そして私が思わず泣いてしまったのが、アンコール後のMC。日高さんが先頭に立っておじさんもといパパに次回ライブの開催を約束させたところ。彼女は「絶対、大丈夫だよっ!」と言いました。実のところ「私は絶対大丈夫」という言葉が嫌いです。なんとも無責任な印象が抜けないからです。塾講師をやっていたときも受験前不安がる生徒に絶対大丈夫と言ったことはありません、言いがちですが。

しかし彼女のその言葉にはそこはかとない安心感がこもっていました。この子となら絶対大丈夫なんだと、理由はありませんがそう確信できる強さがありました。それはまさに作中幾度となくこの言葉で周囲を、そして自分自身を勇気づけてきたまり花の姿でした。更に狙いすましたかのようなラスト「ぽかぽかレトロード」。不意に襲う「絶対、絶対大丈夫だよ」という歌詞にもう涙腺は耐えられませんでした。

 

売れる前から起用されている演者の熱

ひなビタ♪では一体どういう人選をしているのか分かりませんが、例えばNEW GAME滝本ひふみ役の山口愛さんを中学生の頃から、月刊少女野崎くんでブレイクするかしないかあたりの小澤亜李さんを起用しています。そんな経緯もあってか彼女らは「ひなビタ♪のおかげでー」と口を揃えます。こういう思いの強さが前述のキャラ降ろしにもつながっていそうですし、1つのライブに対する熱量がもう凄い。SSPPも運営だけでなく演者がしっかり意見して作られたと聞きました。どんなに売れてもひなビタ♪を第一に考えてくれそうな演者に支えられているのも大きな魅力です。